チャンバーについて! 
メインHTML作成:こすけっ!さん。 若干加筆:管理人けんぽん


 正確にはエキスパンション・チャンバーと呼ぶのがこのパイプの名称。2サイクル・エンジンの排気ボートからサイレンサー部までの筒の部分を指している。

 ちょっと見だけでは、ただの鉄板を加工、溶接しただけのパイプではありますが、
4ストローク用マフラーのようなストレートパイプ構造とは異なり、2ストロークではその特殊な形状から実はシリンダー内で燃焼したガスを効率よく排出してやる役目を持つ魔法のパイプなのです。

 では、どうしてこのただのパイプが排気ガスを外にうまく導いてくれるのか、下図で見てましょう。


注意ノーマルマフラーの内部構造は、上図のようにチャンバー内部は単純なパイプ構造ではなく消音のために隔壁構造が採られています(さらにはサイレンサー内部も)。 これはパワー最優先ではなく、厳しい騒音規制をクリヤーし、乗りやすく、そしてパワーも出来るだけ落とさないようにメーカーが考えに考えて設計した物です。

 @の状態はシリンダー内で爆発が起こった直後、ピストンは爆発力で下がり始めた状態である。開き始めた排気ボートからは、排気ガス(圧力波)がいきおいよくチャンバー内へと飛び出していく。ちょうど風船を針で突いた時と同じような状態です。
 この時の
チャンバー内の圧力は左側の方が高い。しかしチャンバーの形状がだんだん広く(テーパー状)なっているため、排気されたガスは右へ右へと流れていく
 1度加速した
ガスが右に一気に流れると、今度は排気ボートあたりに逆に負圧が生じる

 図A、排気ポート付近に負庄が生じる頃には、シリンダーの掃気ボートが開き始め、掃気が始まる

 
掃気は基本的にはクランクケース内の一次圧縮によって行なわれるが、排気ボート付近が負庄になっているため、そこに吸いこまれるようになっている。


 
チャンバー内で混合気を引っばるということから、膨張室までのテーパー状の部分を、引っばりテーバー部と呼んでいる(図D参照)。引っ張られた混合気は、チャンバー内にまで入りこむ。
 
この混合気は出口付近で、排ガスを圧縮した状態で、ガスの流れが一時停止する。














 図B、次にピストンが上がり始めて、まず掃気ポートが閉じる。しかし、まだ排気ポートは開いておりこの隙間からチャンバー右側のしぼりテーパー(反射テーパー)で圧縮された排ガスの反動(反射波)でチャンバー内に流れ込んだ生ガスが戻される。
 つまり限られたシリンダー内には、
掃気ポートから送りこまれたガスだけでなく出て行ってしまった多くの生ガスが戻され、結果的にはターボチャージャーのような効果が得られる。図C

 以上の行程が連続的に行なわれ、
効率よく掃排気を行ない新気の充填を行うことがチャンバー効果となります。
 
 、、、、ですが反射波が返ってくる時間は一定ですが、ポートの開閉時間はエンジン回転数で大きく変わってしまいます。

 低回転では、排気ポート開閉時間は長くなり反射波は排気ポートが十分開いている時に返ってきて、押し返した生ガスは排気ポートがまだ開いている為に再び出てってしまう。
 また、高回転では反射波が戻ってきた時は、すでに排気ポートが閉じている為に生ガスがそれ以上返らなくなってしまう。これがピークパワー後の落ち込みとなる。

 
これが2ストローク低回転から高回転まで幅広いパワーバンドを持てない理由であり、上記@−Cの工程のタイミングが合う極少ない回転域で2スト独特のパワーフィーリングが得られる。
 
実際にはチャンバーと排気タイミングで同調する回転が決定し、エンジンの特性の大半はここで決まってしまいます。

 
RZRに採用されているYPVS排気タイミングをコントロールし、出来るだけ多くの回転域で上記@−Cの工程のタイミングを合うようにさせるパーツでありますが、どうしてもタイミングが合わないところが、250Rでは5,000〜5,500rpm辺りにトルクの谷として残ってしまっています


<追記>
 現在街中で空冷2ストを中心に、、最近ではRZでも装着していることもある「集合チャンバー」ですが、上記の
理論的から考えてもパワーアップと言う面では無意味なパーツであると言えます。
 ウワサでは
「低回転はトルクもあってイイよ」と言う人もいるようですが、2ストの醍醐味はパワーバンドから加速(パワー)なので、、、、、
 どうしても、この形状が好きな人だけどうぞ。。.

集チャン
図D

 基本的には、チャンバーの性能を決める一番の要素は引っ張りテーパー角(排気流速を調整)と、膨張室の長さ(反射時間を調整)だそうです

 あとの寸法はボア&ストロークから9割決定してしまうそう。残りの1割は理論ではなく実践しないと分からない部分でもあり、
2スト(チャンバー)の難しいところでもある

図E


図F

低速型と高速型

 それではどうして、社外チャンバーに交換するのでしょうか?
 
RZRにもチャンバータイプのマフラーがちゃんと装着されています。
 しかし、
ノーマルチャンバーのセッティング(設計)は、乗りやすさや環境面も考えて、どちらかと言うと低回転時のトルクを重視したタイプであります。

 
アフターマーケット(社外品)のレース用もしくは、ストリートチューン用のチャンバーは、ノーマルに比べると、膨張室が太くて短いタイプとなっている場合が多いです。

 
太くて短いということは、図@から図Bまでの工程を短い時間で行ない、早い時間内に図Cの状態に出来るものが高速型チャンバーなのであります。より多くのガスを送りこむことができる。つまりガスの量が増え、トルクがアップする。

 しかも、
2サイクル・エンジンは高回転時の伸びが命である。誰でも乗れる低速重視型よりも、高速型のチャンバーがいつでも人気があるのはこういった訳である。
 高回転も伸びてなおかつ低回転のトルクもアップするという
都合のいいチャンバーは上記図BCで説明している理由から残念ながら生まれていない

 なお、
いくら高回転でパワーやトルクが稼げても、RZRのクランクのエンジン回転に対する許容量は11,500〜12,000rpmくらいだと言われています。これを上回ってパワーを稼ぐチャンバーがあったとしても、エンジン(クランク)は短命になってしまうそうです。
 元々、RZRはそれほど高回転タイプののエンジンではないので、
エンジンに見合ってちゃんと開発されているチャンバーを選ぶことも重要です。

 例えば、
250、350でもボア(排気量)が異なる為、それぞれ専用に設計(開発)されたチャンバーを選んだ方がベターです。
 右の図EはSP忠男のジャッカルチャンバーで上350R、下250Rのものです。エキパイ径、引っ張りテーパー角もそれぞれ異なることが分かります。

 また、
250だけで見ても右の図Fは全て250R用ですが、メーカーにより形状が異なります。3種いずれもパワー特性が異なります
 チャンバーを選択する際には単なる好きな形状から選ぶのも良いかもしれませんが、自分の
使用用途にあったチャンバーを選ぶことが重要です。
 一般的には
レース参戦経験のあるショップから販売される物は高もしくは中高回転向き街乗り重視のネーミングで販売されている物は低中回転向きである傾向があります。
 個人的には中高回転タイプが低速のトルク痩せもそこそこで、高回転では2ストらしいパンチがしっかり味わえるので好きです。

 また、昔から
チャンバー購入時の注意点としてよく言われるのが、「250のものを350には容量が足りないので使用しない」、「ボアストロークの異なるTZR(1KT系)のチャンバーは使用しない」です。
 いずれも
エンジンが壊れる可能性があるそうです。
 管理人自身も排気量不明チャンバーを使用してデトネーションに悩まされたことがありました。
チャンバーはチューンアップの要なので、少々高価でも信頼出来るメーカーやデータ取りが十分されているチャンバーを購入することをお薦めします。


取り付けに際して

 ただ取りつければいいってモノではありません。


 まずひとつは、
排気ガスが漏れないようにすること。2サイクル・エンジンは、チャンバーがなければ、まわらないエンジンになってしまう。排気ガスによる正、負庄によってチャンバー 効果が生まれる。少しでも隙間やクラックがあると、その効果が十分に発揮できない

 排気ポート部と
フランジは、スタッドボルトにナット止めするが、左右2本のボルトは均等に締めなくてはならない。片側だけ先に蹄めこん だりするとフランジが傾いてついてしまう。これはガス漏れの原因となるので要注意。

 また、
ガスケット類も再使用するとオイルが漏れる原因となる。チャンバー交換時には新品にするのが基本。 もし、再利用する際は耐熱液体ガスケットを必ず併用し、それでも排気漏れするなら新品に交換すること。
 なお、RZRのノーマルチャンバーのフランジは使用状況によっては歪んでしまって、新品ガスケットを使用してもガタが出てしまうことがあります。その場合はペーパーガスケットを2枚重ねて取り付けるとガタが直る場合があります。

  チャンバーを支える
ブラケットの取り付けも、しっかり締めておかないと、振動でゆるみ、その振動が増幅されチヤンバー全体が振動する。フランジに力が加わり、クラックが入る原因となる
 実際には取りつけてから
50kmぐらい実走行し、一度増し蹄めを行ないたい。1000km走行ごとにチェ ックするぐらいの気持ちも必要です。

 また、
フランジとチャンバー本体をスプリングマウントしている社外チャンバーも多いが、チャンバーによっては、このスプリングが走行中飛んでしまう物もある。この場合はスプリングを覆うような形でステンレスワイヤー使用し、フランジとスプリングをつなぐスプリングフック同士を軽くワイヤリングしておくと、スプリングが飛びにくくなります。

 当然ですが、
たとえボルトオンが謳い文句のチャンバーであっても、セッティングは行うべきです。エアクリーナーのブタ鼻外しや、パワーフィルター装着の場合はキャブのジェット類の交換(サイズUP)が必要になります。
 新品購入であれば、
購入場所で基本セッティングを教えてもらい、その辺りからセッティングを煮詰めていくと良いと思います。

 ただ、
街乗りでセッティングを出すのはなかなか大変で、高回転域が薄めになりやすく、こんな状態で高速道路で全開にすると焼きつく可能性があります。
 まめにセッティングを変更する方なら良いのですが、
あまりシビアにセッティングせずに、全体的にある程度濃い目にセッティングして安全マージンを取っておくのが、ストリートでは無難だと思います。
 季節の変化で、空気密度(セッティング)が変わるので、
季節が変わったらプラグチェックは忘れずに!  

メンテナンスに際して

 外観では
まず錆びさせないことがとても重要です。
 常に
高温に曝されるパーツですので、大半のチャンバーの材料であるスチール(鉄)は一度錆びると一気に錆びが進行してしまいます。
 赤茶の錆を放っておくと最
後にはチャンバーに穴が空きます

 
最初はチャンバーには黒ないし透明の耐熱塗料が塗られていますので、この塗膜を保護する為に雨などで濡れたらキレイに拭き取ってあげることが必要です。
 人によって色々方法があるようですが、
耐熱ワックス等を塗るのも良いでしょう。まったく専用品ではありませんが、ウワサではレーザー用艶出しのアーマーオールプロテクタントが安くて、塗って拭いた後の防錆効果が長いなんてことを聞いたことがあります(保障しませんよ)。
 私自身も専用品ではない
汎用のシリコンスプレーを使用しています。

 でも、色々
ケアをしていても乗っているとやっぱりエキパイ辺りから錆びてきます
 まめな方は、チャンバーを外して錆を落として脱脂した上で耐熱塗料を塗りましょう。
 不精な方はチャンバーは取り付けたまま、錆を落として、脱脂して耐熱塗料を筆塗りしましょう。
 
スプレーしようが、筆塗りしようが、とにかく錆を進行させないことが一番重要です。錆びたチャンバーはみっともないです。

 また、
社外チャンバーは長期使用すると、乾いた音がしなくなり、サイレンサーの芯が詰まり排気音が大きくなります。個人的にはあまり酷いと低速トルクも痩せる気がします。
 
爆音サイレンサーは迷惑ですので、分解してメンテナンスする必要があります。

 注意したいのはサイレンサーが分解可能タイプか否かです。
 右上のサイレンサーの様に分解用のリベットないしネジがついていれば良いのですが、
右下のサイレンサーの様にリベット類が付いていない非分解タイプですと、切って分解し再度溶接するしか方法がありません。


下非分解タイプ:旧イシイ等

 分解方法については、いずれコンテンツを作りたいと思います。とにかく、サイレンサーはうるさくなってきたら、分解メンテナンスしましょう。
自分でやれない方は、チャンバーを販売しているショップならお願いすれば大体やってくれるはずです。

 
社外チャンバーからは、聞いていて気持ち良い、乾いた排気音を響かせたいものです。 



記記述は、主に下記を参考文献としていますが間違った記述等あれば、ご指摘いただければ幸いですm(__)m

参考文献
     三栄書房:モトチャンプ 1984 250クオーター特集号
     ネコパブリッシング:1999 CLOSE UP 2ストロークより



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